林陵平監督就任特別インタビュー

2021シーズンより弊部監督に、昨シーズンまでJリーグで活躍されていた元プロサッカー選手、林陵平氏が就任しました。この監督就任は、「現役引退後すぐ監督就任」という異例のケースであるということもありメディアなどでも大きく取り上げられました。そこで今回は林監督(以下、林)と、吉本理ヘッドコーチ(以下、吉本/R2卒・昨シーズンはAチームのOBコーチを担当)を迎えてスペシャルインタビューを実施しました。インタビュアー、本稿編集は水本(新2年プレイヤー/広報ユニット所属)が担当いたします。

– Contents –

「林陵平」を知る

 ・自己紹介
 ・林監督へのイメージ
 ・解説者としての心構え

監督就任について

 ・「監督」の魅力
 ・「監督」としての将来
 ・東大ア式へのイメージ

大学サッカーを語る

 ・選手育成における大学年代の立ち位置
 ・林監督にとっての大学時代
 ・東大からプロへ

今後の指導について

 ・林監督に期待すること
 ・もたらしたい変化
 ・ゴールセレブレーション

最後に

 ・今季の目標、意気込み

「林陵平」を知る

水本:まず初めに簡単な自己紹介をお願いします。

林:1986年9月8日生まれ、34歳です。選手生活は、ヴェルディにジュニアからユースまで10年間在籍して、明治大学で4年間学業とサッカーをし、その後東京ヴェルディに戻っていろんなチームを渡り歩きながらプロ12年間。Jリーグ通算300試合出場67ゴールを決め昨年引退し、今年東京大学運動会ア式蹴球部の監督に就任しました。

水本:吉本コーチは選手時代含め林監督にどんなイメージを持っていましたか?

吉本:そもそも俺が応援しているチームであるレイソルにいて、しかも試合に出て活躍していた選手というイメージだったから、憧れの選手の1人だった。レイソル時代の1番の思い出はクラブW杯に出た時。J2からJ1に上がってリーグ優勝後クラブW杯にまで出ちゃって、しかもネイマールとかと対戦して、結局準決勝にまで進んだチームで陵平さんは活躍していた。その時のイメージが強く残ってる。あとは俺がサッカーにどっぷりハマってからはロティーナ・ヴェルディはすごくネットでも騒がれていて、実際にたくさんの試合を見たし、その中でも中心として活躍していた。俺としてはすごい憧れのイメージが強いね。

水本:僕としても、僕が初めてみたクラブW杯でPKを決められた、レイソル時代でまだ髪も長かった頃のイメージが強く残っています。プレイヤーの身として、試合前のルーティーンなどあれば気になるのですが。

林:体幹とかストレッチのメニューはある程度決まってた。スタジアム入りしてから早めに準備してすぐ足首のテーピング巻いて、その後そのストレッチと体幹をやってチューブでお尻周りに刺激を入れて、というのは毎回のルーティーンだったかな。スーパーヴァーム(明治)を飲むってのも。あれ飲むとなんか体力がアップする気がして。あとは試合前に海外のサッカー選手のゴール動画は毎回見てたね。イメージはすごい大事だから。

水本:なるほど。今のお話でもありましたが、林監督といえば海外サッカーが大好きということで、解説者としても活躍されていますが、解説に挑む時にはどんなことを意識されていますか?

林:いつも試合は見てるからある程度選手名とかはわかってるけど、やっぱり試合の2チームの直近の3試合くらいとか、それ以前の試合のゴール動画とかハイライトはちゃんとチェックし直すね。そういう下準備とかはしっかりする。この間はトッテナム対WBAを解説したけど、やっぱり見てる人はトッテナムのファンとかが多いし、そういう人たちは解説者が試合をちゃんと見てきてるのかは解説者の言葉を聞けばすぐわかるからね。

吉本:そうやって3試合ずつくらい見てスカウティングしたりというのは、指導者としても活きそうですか?

林:そうだね。サッカー選手の中でもサッカー全く見ないってやつもいればサッカー見ると眠くなっちゃうなんて人もいるけど、俺自身はもともとサッカーを見るのが大好きだし、それ自体を仕事とも思ってない。趣味の延長上というか本当に好きだから見てるって感じだから、自分にとっては天職なのかなとも思うし、それがサッカーにもつながるとは思ってる。

監督就任について

水本:引退後、様々なサッカーへの関わり方を経験した上で適性を見極めていきたいというお話をよくされていましたが、その中で監督という関わり方に感じる特有の魅力などはありますか?

林:やっぱりコーチと監督というのも違うし、監督というのは最終的に決断する存在だと思ってるから、そういう面で全ての決断を託されてる、責任を負うことが監督なのかなと思う。その上でサッカーの采配だけじゃなくてチームマネジメントというのもすごく大事にしないといけないのが監督なのかなと思ってる。

水本:そんな「監督」をするにあたっての自分の強み、林監督ならではの監督に向いている点などご自身で思いつくことがあれば教えていただきたいです。

林:俺意外と冷静なのよ。(笑)いい意味で熱くなんないというか。だからチームをうまくまとめる、雰囲気を良くさせる力はあると思ってる。文句を言ったり明らか不機嫌な時がないというか。あと冗談とかも結構好きだから、チームがいい雰囲気でトレーニングをしたりっていう環境作りはできると思う。

水本:確かにユーモラスな印象があるので、そこら辺もこれから楽しみにしています。そんな監督業に適性を感じられれば、今後さらに上のレベルを目指していかれると思うのですが、将来的にこのクラブを率いたいなどありますか?

林:今、どこを率いてみたいとかは特にないかな。でも実際に監督をしてみて、例えばJリーグの監督をしてみたいなと思ったら、ライセンスも今はB級まで持ってるけどA級とS級も取らないといけないし、まだそこに向けての一つ一つの階段があると思う。そうやってどんどん次のステップが見えていくのかなと。一段一段登っていって、自分に合った話があればという感じ。

水本:そういうところにも今回ア式のオファーを受けて頂いたポイントもあるのですかね。今回のオファーについて、事前にア式に持っていたイメージなどありましたか?

林:イメージは正直そこまでなかったね。サッカー部じゃなくて変わった名前なんだな、ア式蹴球部っていうんだなってところで気にはなっていたけど、実際東京都2部というところで試合とかも見れてなかったし。だけど「東京大学」って名前は全国民が知っているわけで、俺もその1人だし、さらにすごい頭のいい大学っていうイメージもあるし、そういう勉強ができるというのも一つの才能であって、勉強できる人達は俺もすごいリスペクトしてるから、そういう学業面でのリスペクトは大きかったね。

水本:なるほど。そんな中で、初めにコンタクトを取ってからもう2ヶ月程が経過し、まだ練習再開はできていないとはいえア式の内部、交渉に当たった強化ユニットや杉崎さんも加わったテクニカルユニット、OBコーチ中心の指導体制など少しずつ見えてきたと思いますが、1人のプロとしてどんな印象を持たれましたか?

林:いや、面白いよ。吉本とかもコーチとしてしっかりしてるなと思うし、フィジカルユニットの田所なんかもしっかりやってくれているなって感じる。やっぱり何か他の学生たちとは違った側面がたくさんあるなというのはア式に入って感じた。例えば連絡の取り合い方も、Slack(チャンネルベースのメッセージプラットフォーム)っていう初めて聞いたようなところに入ってみんなで情報を共有したり。例えば俺が戦術のミーティングをしたいって言ってゲームモデルとかを書いた紙を送ってまとめてって言ったら、テクニカルユニットでしっかりしたパワーポイントにまとめて送ってきてくれたりとか、あとはランニングの計測を実施して結果を送ってって頼んだらきっちりとデータにして送られてきたりだとか。そういうのはやっぱりすごいことをしているなと思う。

水本:ありがとうございます。最後に、今回の就任について周囲の反応などはいかがでしたか?

林:周りのサッカー選手とかも「マジか!」ってびっくりしてたね。やっぱりなかなか引退してからすぐ監督になるってのはないんじゃない?あんま聞いたことないし、サッカー選手にとって引退してから即監督、それに大学のってのはなかなかないことだからみんなびっくりしてたし、すごいなっていうふうにはみんな言ってくれたよね。

大学サッカーを語る

水本:林監督はサッカー界における大学サッカーの位置付けをどういうふうに考えていますか?昨シーズン大活躍したフロンターレの三苫選手など、最近は特に大卒のJリーガーの活躍が目立つイメージがあるのですが、一方で単純に考えてポテンシャル面では大卒の選手よりも高校時代から直接プロに引き抜かれる選手たちの方が高いのではというイメージもあります。

林:もともと大学を卒業して入団となるともう22歳だから、即戦力として活躍しないといけないという見られ方をするけど、最近はそういう即戦力として戦える選手たちが本当に増えてきたように思う。ただ俺自身も大学を出てプロになったけど、大学の4年間ってすごい大事だったし、その4年間がなければ12年間もプロサッカー選手をできてなかった。学業と同時にサッカーの方も努力して、4年間での人間的成長というのがサッカーをやっていく上でも大事だったなというのはすごく感じた。だから決して大学に行くのが遠回りであるとは俺は思わないし、そこで人間的成長とサッカー面での成長を2つ行えれば、サッカー界にとってはすごく大事な存在になれるのかなというふうに思ってる。

水本:実際に林監督が大学生だった時、どういうふうに成長できたか、大学での4年間がどういう意味合いを持ったかなどより詳しくお聞かせ願えますか?

林:そうだね。なんかプロになるやつってだいたい大学1年からAチームで試合に出てるとかが多いと思うけど、俺自身は大学1年の頃はBチームで、Aチームの試合なんか出たことがなくて。でも大学で試合に出ないとプロにはなれないってのは理解してたから、そのために何をしなきゃいけないのかってのを自分で考えた。その結果トレーニングだけじゃなくて日々の食生活の面を変えていかないといけないってことで自分で栄養学とかも勉強して、食事の面ですごくストイックにやり出した。それからは結果も出てきて、大学2年になってからは試合に出続けて、3年でも結果を残して横浜FCの強化指定選手とかにもなれた。やっぱり自分で考える力を身につけれた大学4年間だったね。自分で何か成し遂げたい時に、自分で何かを変えないといけないなっていうのを考えること、自分で見つけてくってことはすごく重要で、そのきっかけを掴めた4年間だった。

吉本:そういう大学サッカーからプロという話で、ズバリ東大からプロサッカー選手は出せると思うか、あとは正直東大生でプロを意識してる選手ってなかなかいないとは思うんですが、陵平さん自身にはそういう意識を持つきっかけを与えたいっていう気持ちがあったりしますか?

林:まず1個目について。俺は全然出ると思うし、最後は自分自身がどうなりたいかってところがすごい大事だから、チャンスがある選手は出てくるんじゃないかって思うよ。実際今も誰か部内でプロを目指しているプレイヤーがいるって話を聞いたけど、俺はサッカーを真剣にやるならやっぱりプロになりたいと思ってる選手がいて欲しいなってのはあった。せっかくやるならというか、自分がやりたいこともしないでその時間を捨ててサッカーに打ち込むんだし、そういう意味ではプロを目指して欲しいって思いもあった。そういう選手がいればもちろんだけど、俺はきっかけを作りたいと思ってる。例えば実際Jリーグのチームとの練習試合を組もうと計画してるし、いい選手がいるならそういう選手をいろんなチームに推薦して練習参加どうですかっていうのも聞けるし。そういう意味ではア式にもチャンスはさらに広がると思うから、是非前向きに目指して欲しい。

今後の指導について

水本:まず吉本コーチにお聞きしたいのですが、山口遼前監督に昨シーズンまで3年間指導していただき、チームにはそのサッカーがある程度浸透していると思います。吉本コーチも山口監督のもと3年間ア式に携わってこられましたが、そんなある程度下積みのあるチームに対し林監督が新たにもたらしてくれることとしてどういうところに期待していますか?

吉本:期待するってなんかおこがましい質問だな(笑)でも今シーズン俺自身としては陵平さんが存分に力を発揮できる環境を整えるってことを第一の目標、使命だと感じていて、その中で陵平さんは今の段階から、フィジカルの人だとか別のコーチ陣とかに色々話を聞いて吸収しようとしてくれてる。俺自体の言ってることが正しいかどうかはともかく、陵平さんがチーム全体で、チームの全員でいいものを作り上げていこうってしてくれるのは俺らにとってもすごいやりがいを感じることだね。その上でプロとして12年もやってきた人だから、サッカーの奥深さみたいなところを俺も吸収したいし、選手たちにも知って欲しい。今までよりもう一つ上のレベルに行くには、やっぱりサッカーというものに対する理解をさらに深めないといけなくて。そこに対するいい声掛けやいい指導、いい雰囲気作りというところはすごく期待していて、楽しみでしかないかな。

水本:今の発言も受けて、林監督としてはどういう変化をもたらしたいと考えていますか?

林:これは結構はっきりしてて、去年まで遼が3年間作り上げてきてくれたおかげでだいぶ戦術面は整えられたと思うし、素晴らしい3年間だったと思う。もちろんそのいい部分を残しながらも、やっぱり俺がア式に足りないと思うのはフィジカル的な要素とか個の質の部分かな。結局はサッカーって戦術が勝負を決めるわけじゃなくて個人の技量が決める部分が大半。一対一に負けないだとか最後シュートをしっかり決めるだとか、やっぱり最後は個の部分がすごく大事になってくるから、その個の部分をより高めていくようなトレーニングをしていきたい。フィジカル的部分でもやっぱり走るだとか身体で負けないという部分は、自分自身大学でもサッカーをやって一番大事な部分と思っていた。しかも今年は1部になってレベルの高い選手たちと戦うということで、戦術だけではカバーできない部分が絶対にあるから、どれだけ個人が一部の中で戦えるかってのがすごく重要になってくると思うし、そういう面での成長を促していくような取り組みは今まで以上にしていきたい。個の部分の成長があれば戦術的な部分もさらに伸びていくと思うしね。

水本:なるほど。最後に少し話が変わりますが、林監督といえばゴールパフォーマンスということで、監督就任の際にもSNS上では今後そうした部分にも注目したいという声が多く見られました。ア式の選手にも伝授したい、または自分がベンチから飛び出してやってやるみたいな考えはありますか?

林:ゴール“セレブレーション”ね。(笑)監督によって意外と冷静な人もいれば喜ぶ人もいるけど、俺は絶対喜ぶと思う。別にセレブレーションはしないし、しろとも言わないけど。(笑)でも点を決めたらみんなで喜んで欲しいし、絶対みんなで喜べとは言うかな。サッカーはやっぱり点を決めるためにやってるから、ゴール決めてクールでいるのは面白くない。みんなで喜び合えるようなチームを作りたいなとは思うし、俺は1人でガッツポーズしてると思う。

吉本:監督のセレブレーション集とかやってくださいよ。モウリーニョの喜び方とか。狭いところ突くの上手いじゃないですか。

林:アンチェロッティがコーヒー飲みながら振り返るやつとかね。

今季の目標

水本:最後に、今季の目標、意気込みを教えてください。

林:まず選手たちに今年の目標はと言うのは聞いて、選手の中で話したこととしては1部残留ということだった。個人としてもここ数年昇格しては1年で落ちているということを考えれば現実的な目標としてはまずは残留だと思う。4年生がたくさん抜けて厳しいというのもあるけど、残留するためにみんなで戦っていきたいと思っています。

2021年2月22日

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