CL シティ×マドリー レビュー

こんにちは、ア式蹴球部テクニカル新2年の髙橋俊哉です。今回は、強豪同士の対決となったCLベスト16レアル・マドリードvsマンチェスター・シティ1stレグの試合を分析していきます。2-1でシティが勝利したこの試合ですが、高度な戦術の駆け引き、そして「戦略」の差がありました。やや長く、また随分前の試合になってしまいましたがぜひ読んでみてください。

 

予想:両チームはどう戦ってくるのか?

 まずはメンバーを見ていきましょう。

 

 

 キーとなるのはレアルの左SBと両WG、そしてシティのCBです。マルセロではなくメンディ、ベイルではなくヴィニシウスとイスコ、そしてフェルナンジーニョではなくオタメンディを起用してきた辺りに、両チームが「まずは守備から」という意識で試合に臨んでいることが分かります。

 

 一方で、両チームのスタンスには少し違いがあります。アウェイで「負けなければOK、負けても最少失点なら大丈夫」というシティに対し、ホームのレアルは何としても勝ちたいはずです。この差が試合結果に大きく影響することになります。

 

 

前半:両チームの「特殊戦術」
2人の「偽9番」の意図は?

 

 

 それでは、試合展開を見てみましょう。上の図でシティのフォーメーションを見てください。いつもはCFのジェズスがSHで起用され、B・シウバとデブライネの2人が「偽9番」のような形になっています。これには守備と攻撃の両面で思惑があるのではないかと思いました。

 

 守備面では、単純にプレス・ブロックの強度を上げるという意図です。本来中盤の選手でサッカーIQも高い2人でビルドアップの起点となるCB2人を抑えようとしたのでしょう。また、SHで起用されたジェズスはスピード・献身性があり対面のカルバハルのオーバーラップに対応することができます。

 

 攻撃面では、「レアルのCBとマトモに勝負したくない」という思惑があったのではないでしょうか。ヴァランとS・ラモスの2人の対人守備は世界最強クラスで、個人的な身体能力で言えばアグエロやジェズスでも勝てないかもしれません。一方でこの2人には「積極的に前に出てボールにアタックする」という特徴があります。ペップとしてはこれを逆手に取り、B・シウバとデブライネの2人でCBを釣り出しジェズスとマフレズを斜めに飛び込ませたかったのでしょう。

 

 

 しかし、この攻撃的な意図は失敗しました。「ペップ」「偽9番」…と言えばバルサのメッシです。レアルにとっては散々クラシコでやられた相手で、対応されてしまいます。ただし、シティにとってはこれもおそらく想定の範囲内です。負けなければいいシティにとっては守備さえできていればよかったのですから。

 

 

レアルのオールコートマンツーマン

 両チームともボール保持とハイラインを特徴としてくるチームです。そのため、お互いにビルドアップ/ハイプレスの局面でどれだけ相手を剥がせるか、どれだけ相手をハメられるかがキーになると予想しました。

 

 レアルはシティのビルドアップを阻害するべく、分かりやすい作戦をとってきました。オールコートマンツーマンです。単純に思えるこの戦法ですが、いくつかの仕掛けがあります。まずはGKエデルソンには誰も付かなかったことです。エデルソンは足元の技術に優れ、簡単にプレッシャーをかけても剥がされてしまう危険があります。そのため敢えてエデルソンをフリーにさせて、出しどころのないエデルソンにロングボールを蹴らせるのです。ロングボールを蹴らせてしまえば「質的優位」を誇るCBが容易に回収できます。実際に、エデルソンのパス成功率は66%にとどまりました。また、マンツーマンでマークする相手は厳密に決めていなかったと思われます。レアルは攻撃の流動性が持ち味であり、トランジションの際に一番近い相手をつかむという決まりだったのでしょう。

 

 

レアルのボール保持・シティの対応

 続いてレアルのボール保持です。前半、レアルのビルドアップに対してシティは4-4-2の形でプレスをかけ、人への基準は緩めでした。対してレアルはビルドアップの際CBにカゼミーロも加えた3枚で回してきます。シティとしては、比較的足元のないカゼミーロとクルトワにはボールを持たせても大丈夫、という考えだったのかもしれません。しかし、あまりにフリーにさせてしまったため守備的にはかなり難しくなりました。35分過ぎからはCHのどちらかが前に出てケアするよう修正します。これに対しレアルはモドリッチがモドる(Salida Labolpiana)ことで数的優位を維持します。

 

 レアルはあまり中央に縦パスを通したりせず、サイドチェンジを多用して攻め込んできます。特に左サイドで張っているヴィニシウスへのロングボールは多く、F・メンディとのコンビネーションから崩していくシーンも見られました。しかしシティの右サイドには対人守備に滅法強いウォーカー。シティがなんとか無失点で前半を終えることができたのは彼の力が大きかったです。ここがB・メンディだったらどうなっていたかは分かりません。

 

 逆に右サイドはイスコが中に絞ることも多く、オーバーラップしたカルバハルが受け手となっていました。シティはここのケアも怠りません。ジェズスがしっかりと戻りケアします。

 

 

 もう一つ、レアルの攻撃の重要なキーマンとしてイスコがいますが、これについては後に書いていきます。

 

 

前半まとめ

 何度も書いたようにシティとしては無失点で終われればオールOK。守備に関しては上手くいっていたと言えるでしょう。オタメンディも縦パスを狙われるシーンこそあったものの、守備面では流石の貢献を見せます。もちろんチャンスはありジェズスらが決めていれば最高だったでしょうが…

 

 一方のレアル。プレス時はオールコートマンツーマン、前進されれば4-1-4-1でミドルプレス/ブロックと二段構えで対応。中を閉めることでサイドに誘導します。更に被カウンターの際には中盤の戦術兵器バルベルデが怒涛のトランジションを見せ対応しました。このように守備に関しては上手くいっていたと言えます。それでは攻撃は…?結果論でしかないですが、前半のうちに先制点を取れなかったことが大きく影響してきました。

 

 

後半:
落ちたレアルのプレス強度とシティの修正

 後半開始からシティは何度がチャンスを作りますが、マフレズやジェズスが決めきれません。するとレアルに絶好のチャンスが訪れます。前半から狙われがちだったオタメンディのミスを誘いショートカウンター一発。イスコがしっかり決めて先制しました。

 

 しかし、後半になると明らかにレアルの守備強度が落ち始めます。前半から高いインテンシティを保ち続けてきたレアルでしたが、流石に90分は持ちません。バルベルデを1枚上げた4-4-2で対応するもののシティのボール保持が増えてきます。

 

 後半シティのペースになった理由はレアルの強度が落ちたことだけではありません。前半よりも人に対する意識を強め前線から激しくプレスに行きます。カゼミーロに対しても明確にIHをぶつけレアルのビルドアップを阻害します。

ここでシティの「戦術兵器」が登場しました。

 

 

スターリングの登場

 失点後、ペップはB・シウバに代えてスターリングを投入、左WGに置きジェズスをトップに据えます。対してジダンは前半からハードワークしていたヴィニシウスを下げベイルを左WGに入れました。

 

 この時点でジダンにはいくつかの策があったと思います。1点差を守り切るのか、更に得点を狙いに行くのか。下げるのはヴィニシウスか、イスコか。入れるのはベイルか、それともL・バスケスか。この交代が意味するところはつまり「イスコは引き続きビルドアップの中継地として必要、そして左サイドには『槍』を置き2点目を狙いに行く」ということです。シティに対して1点はセーフティリードではありません。カウンター時に独力で持ち上がれるベイルを置くことでシティにプレッシャーをかけようとしたのでしょう。

 

 ジダンにとって誤算だったのはベイルのインテンシティが想像以上に低かったことです。結局攻撃で違いを作れず、守備でも強度不足の「弱点」となってしまいました。対するスターリングは持ち前のスピードでレアル守備陣を切り崩していきます。ジェズスの同点弾は交代の5分後。これはデブライネのクロスがスーパーでしたが…

 

 

 逆転弾もスターリングが対面のカルバハルをぶっちぎって得たPKでした。レアルは慌ててL・バスケスとヨヴィッチを投入しますがもう手遅れ。ラモスの退場というオマケ付きで2ndレグはかなり厳しいものとなったと言わざるを得ません。

 

 

大きかった「戦略」の差
イスコ起用の意図

 

 試合前のスタメン予想ではベイルやL・バスケスの起用が予想されていた中、ジダンは右WGにイスコを起用してきました。イスコを起用した場合、求められるのは崩しの際のアイデア創出、そしてビルドアップの目的地としての役割です。この攻撃時の役割については十二分に果たしていました。モドリッチがビルドアップの起点となる分、中盤の受け手はバルベルデ、そしてフリーマンのように漂うイスコになります。更にシティは直前のレスター戦でライン間のギャップを頻繁に使われたばかり。イスコにとってはこれ以上ない環境でした。

 

 

 レアルにとっては勝つためにイスコを使わざるを得なかったのです。ベイルだと守備が死ぬし、L・バスケスだと多分攻撃が成り立たないという苦悩が見て取れます。

 

 イスコが「フリーマン」になるとすると、難しいのは当然守備です。前半はマンツーマンという原則が守られたため近くの相手をつかめばよく、簡単でした。しかし後半に全体の守備強度が落ちる中、イスコも明確な役割を失い守備弱体化の一因となります。1失点目のシーンは顕著です。直前のビルドアップのシーンでカルバハルは右サイドの高い位置を取っていました。何故なら本来幅と深みをとっているはずの右WGがいないからです。更にボールを奪われると敵陣までゲーゲンまでかけに行きます。こんな孤軍奮闘の中、中央に陣取るイスコはボールホルダーに全くプレッシャーをかけません。結局ロングボールでカルバハルが裏を取られましたが、これで守れというのはあまりにも酷な話です。

 

 

 

ジダン采配を読んでいたペップの用兵術

 直前のビッグマッチ、マドリードダービーでジダンはイスコを起用しました。同じく負けられないこの試合で再びイスコをWG起用してくる、ペップはそう読んだのでしょう。イスコをWGで起用するとどうなるか?サイドのレーンを埋めるのはSB1人になります。そのためペップは「サイドで輝ける選手」をサイドで起用してきました。(ジンチェンコのベンチ外、B・シウバのCF起用からも分かります。)事実、レアルの右サイドはカルバハル1人がジェズスとメンディ2人を見るシーンが多くありました。数的不利が続き、相当疲労は溜まっていたでしょう。そこにキレッキレのスターリングが途中から出てきたとなれば、僕だったらその時点で泣いてしまいます。PKのシーンも簡単に振り切られたようにも見えますが、僕には彼を責めることはできません。

 

 

まとめ:2ndレグに向け

 結局、試合結果を大きく左右したのはホーム&アウェイというシステム上の理由、そして両監督の采配の差でした。スターリングという切り札からいたからこそ、シティにとっては失点しなければよかったのであり、またレアルにとっては1点差では安心できなかったのです。ただし、結果論ですがイスコに代えてL・バスケスを投入していたらどうなっていたかは分かりません。

 

 また、レアルにとって痛かったのはハイインテンシティが長い時間持たなかったことです。これもあってか、レアルはクラシコにてバルサに対し引いて守る戦術を取ってきました。

 

 2ndレグではどのような試合展開になるのでしょうか?レアルがベスト8に進むには、勝利し、かつ得点を奪わなければいけません。クラシコと同じように引いてくる可能性はあります。しかしそうすれば、シティお得意のボール保持の展開になります。しかも、守備の要がいないという条件の中で…(第二弾として2ndレグについても分析するつもりでしたが、延期によりボツとなってしまいました。コロナのバカーーーーーーーーー!!!!)

 

 

 

 

 

 

ごあいさつ/テクニカルスタッフについて

 新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。そしてこんな冗長な記事を読んで頂きありがとうございます。つたない分析と文章でしたが、お楽しみ頂けたでしょうか。ここで少しア式蹴球部のテクニカルについて説明させて頂きます。

 テクニカルスタッフは、hudlやCATAPULTといったプロも使用するツールを用いて試合のフィードバックや対戦相手のスカウティング(戦術分析)を行い、プレイヤーを戦術面から支えるユニットです。また、練習や試合の撮影、選手へのアドバイスという形でもア式を支えています。いわば「ア式の頭脳」であり、戦術を重視するア式の核となる存在です。サッカー経験の有無などは問いません。もしこの文章を読んで少しでもテクニカルに興味を持って頂ければ幸いです。

 

 

山口遼監督による戦術講習

 

戦術的ピリオダイゼーションを実践する山口遼監督による分析会

 

 テクニカルスタッフはこのような分析会を通してサッカーを観る目を養うことができます。何を隠そう、この記事も以前の分析会にて行った分析をもとにしています。戦術的ピリオダイゼーションを実践する山口遼監督による戦術講習は目から鱗の内容が盛りだくさんです!

 

 

Q and A

Q.どんな人がいるの?

高校のサッカー部でキャプテンだった人や元物理部の人、サッカーより野球が好きなスタッフもいます。

 

Q.サッカーに詳しくなくても大丈夫?

A.基本的な戦術指導から行うので、未経験者も大歓迎です!

 

Q.女性はいるの?

A.います!体力は関係ないので、とある女性スタッフはおそらく大学サッカー界で一番ひ弱です。

 

Q.機械弱いし、パソコンも詳しくない…

A.ソフトの使い方も一から教えます。入部当初、Excelを使ったことがないスタッフもいました。

 

Q.どれくらいの活動があるの?

A.平日は週1〜3日部室で作業をします。在宅でできる業務もあるので授業が忙しい人にも対応可能です。

 

 

 

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2020年3月16日

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