2つの「ア式」による伝統の一戦。
関東最強の頭脳を持つ戦士たちの絶対に負けられない戦いが、始まる。
◻︎日時
9/29(日) 一橋大学 vs 東京大学 14:30KO
◻︎アクセス
一橋大学小平国際キャンパス
西武多摩湖線「一橋学園」駅より徒歩7分
前編
自己紹介
宮内:本日はお集まりいただきありがとうございます。司会進行を務めさせていただきます東京大学1年の宮内優弥です。よろしくお願いします。まずは自己紹介をお願いします。
桑原:今年から東大ア式で監督をしています桑原です。経歴としては、どこまで遡ればいいのか分からないんですけど(笑)プレイヤーとしては中学生までで、高校生の時からコーチとしてのキャリアを始めました。高校卒業後に約2年間スペインに行き、コーチをしながら現地の監督ライセンスを取得し、その後日本で1年間ほどコーチとして仕事をしていました。それからジュビロ磐田で通訳として半年間、アナリストとして1年間働いた後に、パラグアイリーグのチームに移籍をして1年半アナリストとして仕事をしていました。その後、関東リーグのエリース東京FCでヘッドコーチを1年間した後、今年から東京大学ア式蹴球部の監督としてお仕事をさせていただいてます。
木室:僕はプレイヤーとしての経験は一切なくて、大学生になってからライセンスを取り、初めのうちは高校生を教えていました。FC.AWJ(関西1部)というチームが兵庫県リーグにいた時に、ヘッドコーチとして1年間やっていて、その後東京外国語大学で2年間監督を務めた後、去年からヘッドコーチとして一橋ア式に移籍して今年が2シーズン目です。
宮内:お二方ともサッカーの経験自体はそれほど長くはなく、木室さんに至ってはほぼないということで、あまり経験がないからこその自分の強みは何かありますか?
桑原:ないからこその強み……
宮内:そうですね。テツさん(※桑原監督)はこれまではスペインやパラグアイ、Jリーグでコーチやアナリストをされていたと思うんですけど、今シーズンが初めての監督ということで、まだシーズン途中ですが振り返ってみてどのように感じましたか?
桑原:監督はとても難しい役職だと思っていて、今年は実際その通りになっていますが、責任があり難しい役職だからこその達成感、満足感というのは、コーチやアナリスト、通訳と比べると一番実感できると感じています。
宮内:これまでのアナリストとしての経験が今どのようなところで活きていますか?
桑原:毎日活きているなとは実感していますが、よくアナリストの仕事内容で挙げられる対戦相手の分析や、ゲームプランの設計とか。あと些細なことですが、パソコンを扱うスキルもアナリストはそれなりに技術が必要なので。そういった意味ではミーティングの映像やスライドの準備をするとか、トレーニングの資料を作るという面でも、アナリストとして3年ほど仕事をしてきた経験が監督にもとても活きているなと感じています。
宮内:一方で木室さんは、サッカー経験が無い中で、なぜコーチや監督をやろうと思ったんですか?
木室:小学生の頃からビッグになりたいという漠然とした夢があったんですけど、ビッグになる手段が当時水泳をやっていたので、(水泳が)多分一番近かったんですよ。でも中学に入った段階で、僕これじゃ世界行けないなって。日本でもトップに行けないなっていうのを感じちゃったので、何かないかなって探してた時に、たまたまプレミアリーグにハマって(笑)サッカーに関わる職業というか、この舞台に何かしらの形で関わりたいってなった時に、さすがに中1からサッカーを始めてトップに行けるわけはないので。監督だったら一生年を取ってもやれるから、監督をやってみようというのがきっかけでした。
宮内:そこからどのようにサッカーを勉強されましたか?
木室:ベタですけど(笑)footballistaとか戦術についての雑誌、本を読み漁っていました。最初の質問でいう、やってないからこその強みはあまりないんですけど、逆に言うとそれを打ち消すために色々勉強してきたことが、今それこそ分析などに繋がってるかなとは思います。
両監督の将来像
宮内:お二方ともまだ若くて、チャレンジングな監督ですよね。テツさんは高校卒業後スペインに行こうとしたことで周囲からは反対されなかったんですか?
桑原:周りの大人にも反対されましたし、両親には2回ほど反対されました。学歴的には高卒が東大生を相手してるという、すごい面白い構図ですよね(笑)
宮内:そうですね(笑)スペインに単身で渡る時の恐怖はなかったんですか?
桑原:それはとてもありました。やっぱりサッカー界は基本的に報われない世界だと思いますし。何十年かけても夢を叶えられないのが普通だと覚悟はしていたので、ほぼほぼ叶わない夢を追いかけに行ったら、なんかうまくいったなと(笑)
宮内:テツさんはどのような長期的な目標でスペインに渡ったんでしょうか?
桑原:元々30代の内にはプロチームで監督をしたいなと思い、その第一歩としてスペインへライセンスを取得しに行きました。いくつか種類のあるライセンスの内一つを取得して、金銭面やビザの問題により長期滞在ができず一時帰国をして、日本で働いていた時にたまたまJクラブから通訳のお話をいただけて、それがきっかけで21歳でプロクラブに入団することができました。元々は30代前半までにはプロの世界に入りたいなとか、スペインに行く前までは監督になりたいなとは思ってはいましたが、監督という役職があまり自分に合わないというところも感じたので、実際にスペインに行って帰ってくるとヘッドコーチやアナリストを目指したいという気持ちになっていたところ、運良く通訳からアナリストになれました。
宮内:木室さんは高校でサッカーの指導をしていた時、その後はどのようなプランを描いていたのでしょうか?
木室:元々中学の時は世界に行きたいというのはあったんですけど、JFAのライセンスを取ったりだとか、(日本)代表が強くなっているけどなかなか勝てないとか、世界では(ベスト)16の壁に阻まれていたり、というのを見ていると、やはりJリーグに関わりながらトップに行きたいなというのを指導者になってから考え始めていました。それこそ桑原さんと似ているんですけど、40歳ぐらいまでに日本のトップカテゴリーで監督をやれればという中長期の目標を19、20歳の時に立てていました。それに向けていきなりJリーグに行くのは、自分の実力もそうですし、何の繋がりもなかったので、たまたま外大の知り合いを伝い、外大の方に移籍しました。その頃には大学サッカーのレベルはすごい上がっていたので、まずは高いレベルで監督という経験を積めるのであれば、変にJリーグでアシスタントコーチだけをやるよりは、監督業を実際に下のレベルでもこなした方が自分の経験になるのではないかと思ったので。
マネジメント面で意識していること
宮内:東大ア式、一橋ア式どちらも伝統あるチームでスポーツ推薦を取らなかったり、学生主体の運営だったり、共通しているところも多くありますよね。そのような、普通のサッカーチームとは少し違うチームの監督を務める中で、マネジメント面ではどのようなことを意識していらっしゃいますか。
桑原:最初の方のミーティングでも選手達に話したのですが、自分は選手たちと年齢もそこまで離れてはいないので、あまり壁を作らないような距離感をまずは意識していて、練習の前後でもなるべく話しやすい雰囲気や関係性の構築はしていきたいなと心がけています。あとは、ミーティングやトレーニング中の声かけで、どのような言い方やキーワードを伝えるべきかというのは毎日ずっと考えています。おそらく自分がどんなに下手な説明をしてもある程度は理解してくれるとは思いますが、自分が来て1年目の今年は、選手がこのサッカーに慣れていなかったり、自分の考えが想像以上に伝わらなかったりすることの方が多いとは思っていたので、選手がより頭がスッキリとし納得してプレーできるためにも、選手との距離感と伝え方の2つはより意識しています。
宮内:スペインやパラグアイに行った時とは何か関わり方を変えていますか?
桑原:逆に、海外では選手とサッカーの話をすることはほとんどなかったですね。プライベートの会話は多くしていましたが、役割がアナリストとかアシスタントコーチというところもあり、監督やコーチ陣とのコミュニケーションの量はすごく多かったのですが、トレーニング中や試合前後で選手へ直接的な指示や会話はほとんどしていなかったです。というのも、自分がプレイヤーとしてもキャリア的にもそこまで実績のある人間でもない。だから海外のプロの選手からは良くも悪くもリスペクトされにくい関係性だったので。よくわからないアジア人にサッカーの指示をされても誰も聞いてくれないというところもあり、現在と比べると役割と関係性のところは全く違いました。
宮内:木室さんは外大など、これまでいくつか日本でも指導経験があると思うのですが、その時とはマネジメント面で変えているところはありますか。
木室:外大と全然違うのが(一橋ア式は)3倍ぐらいの規模があります。例えばBチームの子たちを、常に見続けるのが不可能なので、Bチームの監督をやってる学生コーチにBの子たちの様子を常に聞くとか。あるいはBの試合や練習時間が被っている時があるので、Aの練習終わりにBの練習を見るであったりだとか、そういう姿勢を選手に見せるのは大事にしてるところですかね。あと意識してるのは、就活とかが増えてきたりするので、そういう時には就活を優先してもらうようにというのは、多分他の大学よりかは自由にできるようにしています。
宮内:確かに、Aチームと育成チーム(※Bチーム)の両方を見るのは難しいですよね。テツさんもサタデーリーグ(※関東・都リーグに所属する大学のサテライトリーグ)など割と見に来ているような印象があるのですが、育成チームについても関わり方で気をつけているところはありますか?
桑原:育成の選手は結構気をかけて見ているようにはしています。最近はチーム状況もあまりよくなくAチームのことで忙しかったりで、1月2月ほどは気にかけて見れてはいませんが、リーグ戦が始まる前までだと、週末の育成の試合を必ずチェックし、練習も数メートル距離を空けて邪魔にならない距離でよく観察してました。選手の意識が下がらないようにAチームと育成チームの選手の上げ下げも出来る限り頻繁にするようにはしています。
宮内:一橋さんは、Aチームと育成チームの上げ下げはどう考えてらっしゃいますか?ご自身で決めていらっしゃいますか?
木室:ウチのスタッフやAチームもBチームも含めてみんなで考えて決めているんですけど、上げ下げはかなり頻繁に行っている方だと思います。
互いの印象
宮内:ある程度お二方について一通り聞いてきたのですが、ここまでで互いの印象はどう感じましたか?
木室:似てる、似てる(笑)
桑原:やっぱり、ちょっと変わった人がサッカー界に入りがちなので。ビッグになりたい情熱もわかるところはありますね(笑)
木室:普通パラグアイ行きませんからね(笑)スペインはギリわかるけど。
桑原:パラグアイはよく間違われます。ウルグアイと(笑)
木室:ああー確かに、同じスペイン語ですしね。
桑原:あれ木室さんっておいくつなんですか?
木室:今年で27歳です。1997年生まれです。
桑原:あ、同い年なんですね。いや面識があまり無いので(笑)一回挨拶させていただいたくらいで。
木室:そうなんですよね。あの日(前期東商戦)は土砂降りでそれどころではなかったので。
桑原:ご出身どちらなんですか?
木室:大阪です。
桑原:そうなんですね。よろしくお願いします(笑)
木室:よろしくお願いします(笑)
一橋大学ア式蹴球部公式noteにて公開されている対談企画後編では、両チームのサッカー像、注目選手、意気込みなどについて語ってもらいました!下のリンクよりぜひご覧ください!!